2018年4月2日月曜日

「費用対効果の試算なし」に住民あぜん 小金井都道計画説明会レポート

3月25日(日)、3月26日(月)の2日間、はけと野川を分断する都道3・4・11号線の整備に向けた説明会が小金井市立南小学校体育館にて開催されました。
25日は午後2時からということで、体育館いっぱいの市民が集まり、東京都の概算発表では200名、26日は平日の夜7時からだったので約100名の参加がありました。
(正確な参加人数は4月中頃に東京都のHPに発表されます)

市民でいっぱいの体育館。紅白幕があるのは卒業式と
入学式の間の時期に体育館を借用したから。


説明会の様子を、はけ文会員でジャーナリストの斉藤円華さんに報告していただきました。ぜひお読みください。

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小金井都道計画(3・4・11号線)にかんする東京都建設局主催の住民説明会が3月25日(日)、26日(月)に市内の東小学校で行なわれた。都は都道建設の目的として渋滞解消や防災などを強調し、工事にともなう環境配慮も説明。しかし参加した住民とのやり取りの中で、それらの主張がきわめて根拠に乏しいことがわかった。


■計画の無根拠さが次々明るみに

説明会で都は3411号線を整備する必要性として、これまでと同じく●広域道路網の整備●周辺道路の渋滞緩和●クルマの抜け道の交通量抑制による良好な居住環境●防災対策、を挙げた。

これに住民からは、「ネットワーク(広域道路網)の整備ありきで、何のためにという住民の視点が抜け落ちている」「交通量調査では交通量が減っている箇所もある」「マイカー保有台数は減少傾向。都道が出来るのはだいぶ先であり、その頃には交通量が減る可能性もある」「50年以上前の道路計画。防災対策は後付けの理由だ」「必要性の論理をしっかり示して」などと反論が相次ぐ。

ところが都は、こうした意見を説得できるような説明をせず、「将来的には交通量は減るのは事実だろうが、都の持続的発展のためにこの道路は必要と考えている」(都建設局課長)などと言うばかり。そもそも交通量が今後減るならば、巨額の税金を投じ、住民に大きな負担を強いてまで今回の都道を作る必要があるのか。

また、「今回の都道計画にはいくら建設費用が掛かるのか。概算でもいいから示して」との住民意見にも、都は「費用は持ち合わせていない」。そもそも論は徹底して回避しつつ、「住民の理解を求めたい」と言いながら都道計画をごり押しする都の姿勢がこの場でも際立った。

都道説明会に臨む東京都建設局の出席者。


ちなみに都は3411号線ができれば、いずれも広域避難場所である小金井公園と武蔵野公園が結ばれることで「地域の防災機能が上がる」という。しかし、それを裏付ける根拠はやはり都から示されない。「後付けの理由だ」と言われても仕方がないだろう。「環境配慮」も、都環境局などとの協議を経ていないことが21日の回答説明会でわかっている。

住民と都のやり取りの山場は2日目に訪れた。住民の1人が「都として今回の都道計画の必要性を検証したのならば、費用対効果の試算を示してほしい」と迫ると、何と都はこれについても「持ち合わせていない」と回答。会場は騒然とし、質問者も「この計画は数字も何もなく決めたのか。都は私たちに『理解して下さい』と繰り返すが、数字も何もなければ理解しようがない」と呆れたように話した。


■強引な進行にヤジ轟々

こんかいの説明会で目立ったのが、都の強引な進行だ。概要説明はスライドと録音した音声で行ない、住民から「そんなのおかしい」「納得できません」などと異論が出ても止めない。また、質疑応答は1時間だったが、発言を求めて多くの住民が挙手していたのに、司会は「残り3人で打ち切ります」。会場撤収などの事情はあったにせよ、時間が短かすぎたと言わざるを得ない。

さらに、都の説明に納得できない住民のヤジには「静かにしてください」と繰り返すのみ。すでにふれたように、都の説明は「決定ありき」で、その根拠が住民に十分示されていたとはとても言い難い。そのため、住民の不規則発言が相次いだのはやむを得ないことといえた。それを無理やりねじ伏せて議事が進む様子は、今回の都道計画のずさんさを際立たせているように見えた。


都建設局の事業化調整専門課長(左)と工事第一課長(右)。
このほか課長代理も随時発言した。



■その時市長と都議は? 問われる小池都知事の「公約」

パブコメで2000通以上の意見が寄せられ、市議会では「計画見直しを含めた話し合いの場を求める」とする意見書が全会一致で採択されている(※)、小金井都道計画。環境や住民への影響など、市民の関心は非常に高い。市民の代表である小金井市長、小金井市選出の都議会議員は説明会に足を運んだのか。電話で確認してみた。

市長は会期中の市議会への対応のため、との理由で2日間とも欠席。都議は「都建設局から報告は聞いている。(私とは)面識もなく、都道計画は微妙な問題のため出席したかどうかは会って話したい」と話し、出欠を明らかにしなかった。

公人である都議が、公の行事への参加について「面識がない」などとして事実確認を避けるのは、一体どうしたことか。私の周囲で、会場で都議を見かけた人はいなかった。やはり電話で都議に問い合わせた人によれば「参加していなかった」という。

首長や議員が現場に足を運ばず、行政担当者の報告のみを聞くとすれば、行政のフィルターで選別された、あるいはバイアスのかかった情報しか耳に届かない懸念がある。

いずれにせよ、住民の関心が高い都道計画をめぐり、住民の代表である首長や議員がどう振る舞っているのかを、随時チェックする必要がある。都道計画に限らず、地域が抱える問題の解決に向けてどんな仕事をしているかは、次の選挙でだれに投票するのかを決める重要な判断材料となるからだ。

ところで選挙と言えば、思い浮かぶのが小池都知事だ。小池氏は、都知事選での住民アンケートに次のように答えていた。

「とりわけ地元から強い疑義が提起されている路線を実際に巡視し、地域住民の皆様とも対話し、優先整備路線に位置付けることが不適切だと判断される路線に関しては、大胆に見直しを進めていきたい」

この公約はいまだ果たされていない。小池氏は「実際に巡視」せず、都建設局は「地域住民の皆様とも対話」せずに「理解して下さい」と繰り返すばかりだ。説明会で、小池氏のアンケートについて質した参加者は、続けて次のように訴えていた。

「アンケートの回答を見て、都道計画について真摯に考えていると思い小池氏に投票した。それが都の検討だけで方針を変えて計画を進めるのであれば、今後は都知事の発信する内容をすべて疑ってかからなければならない。(現状では)ただ票を集めるために選挙では調子のいいことを言っていた、と思われても仕方ない」。言いっぱなしは許されない。

(※)2017年9月と12月。また、都道説明会終了後の2018年3月28日にも3回目の意見書が採択された。いずれも全会一致。

               
                斉藤円華(市内在住・ジャーナリスト。はけ文会員)