2019年2月17日日曜日

第3回「意見交換会」レポート

「もう意見交換会はやりません」!?
小金井都道問題、3回目の「意見交換会」も不成立に

斉藤円華(市内在住・ジャーナリスト)


東京都が小金井市内に建設を計画している都道3・4・11号線をめぐり、都建設局が主催する住民との「意見交換会」が2月8日(金)夜に市商工会館で開かれた。

おととし2017年11月、昨年1月に続き「3回目」となった今回。都は「(そもそもの計画の必要性について議論を求める)住民との立場は平行線。意見交換会では都が求める結果が得られなかった」として、一方的に同会の打ち切りを宣言した。過去2回に続いて今回も不成立に終わった形だ。都は今後、意見交換会ではなく「オープンハウス」形式の住民説明会を行っていくという。

■住民「この1年、何してたんですか」

「この道路は本当に必要なのか」「計画決定のプロセスが不透明だ」「地域が分断される」「はけと周辺の環境が壊されるのでは」「(計画決定した)都市整備局が出席しなければ話し合いにならない」。これまでの意見交換会、そして昨年3月に2回開かれた住民説明会では、多くの出席者が今回の都道計画に対して疑問の声を上げてきた。

中でも計画決定のプロセスをめぐっては、大きな問題点が指摘されている。計画承認に関する旧建設省内の文書(1962年)で、本来なら建設大臣以下の関係閣僚らの決裁印が必要なのに、「戦時特例」でそれらが押印されていないのだ。敗戦から17年も経った平時に、「戦時」の「特例」にもとづいて決裁されるというのは、常識的に考えれば十分おかしな話だろう。

住民側は当初からこの問題点を指摘。今回も「(正規の手続きに沿った)文書を示せ」と迫ったが、都は「当時の法令に基づき、適切に処理したものと認識している」(配布資料)と、歯に物がはさまったような回答をするのみ。不備のある手続きだとの自覚があるのか、「法にのっとった手続きで、全く問題ない」と言い切ることもしない。煮え切らない都の態度に住民からは「この1年、一体何をしてきたんですか」との声も上がった。

「そもそもこの道路は必要なのか」。3回目の
「意見交換会」も住民から厳しい質問が飛んだ。

 都がこのかん新たに行なったことといえば、昨年11月から12月にかけて実施した交通量調査がある。今回、都は「平成27(2015)年の交通センサスよりも詳しく調べた」と説明。しかし平日12時間で比べると、例えば連雀通りでは7273台(平成27年交通センサス)だった交通量が、今回の調査では同区間の両端の交差点でそれぞれ6665台、7240台となっている。

つまり過去3年で、交通量が目立って増えたとは言えないのだ。他の調査地点を見てもせいぜい横ばいで、見ようによってはむしろ減っている。また休日の交通量に関してはセンサスのデータがないため、過去と比較できない。

一方、細街路(さいがいろ、いわゆる「抜け道」などを含む細い路地)で通過車両のナンバープレートを記録して12時間の交通量を調べる調査では、「抜け道」利用の交通量が休日で67%に達する地点(連雀通りと〈二枚橋の坂の市道〉との交差点)もある、との結果が示された。

しかし、これも過去のデータがなく比較ができない。また、交通規制の方法によって「抜け道」利用がどう変化するのかも不明だ。そもそも、仮に抜け道利用を完全に防いでも3割強の車両通行は残るとも読め、ともあれ、このデータを都道計画実施の裏付けとするのは苦しい。

「道路の必要性を検討するために交通量調査をするのが本当では。『都道を作る』と結果を決めてから調査するのは順序が逆だ」との住民の発言がすべてを物語っている。

ちなみに今回、意見交換会の開催通知が届いたのが3週間前、市報に開催告知が載ったのはたった1週間前。交通量調査結果などの資料送付にいたっては直前ギリギリの2日前という不手際ぶりだ。調査結果をめぐって、都は住民からの質問や追及がよほど嫌だったのだろうか。それにもかかわらず傍聴席は立ち見も出る盛況ぶりで、この問題への住民の関心の高さを改めて印象付ける結果となった。

■都には都合のいい「オープンハウス」

「これまでの意見交換は、(事業を前提にするという)われわれが目的とする形では実施できなかった」「計画の見直しについての意見交換はできない」「優先整備路線なので、計画を棚上げにする議論はするつもりもない」(都建設局・事業化調整専門課長)

都としてはあくまで計画実施を前提に、その方法について住民と意見交換したかったが、それができなかった。小池都知事が言う「丁寧な対応」は計画の実施が前提であって、原点に返って必要性を検証することは含まれない、ということか。

都は「今後、オープンハウス型の説明会を開催する」と説明。一般にオープンハウスでは、出入り自由な会場に説明パネルなどを並べ、配置された職員が来場者に事業計画を個別に説明する形をとる。

その理由について配布資料で「より多くの方々と個別にお話ができ、様々な意見を伺うことができる」とするが、「意見交換」という文言は注意深く避けられている。行なうのはあくまで「説明」であって、意見交換や議論が目的でないのは明らかだ。

「オープンハウスで、都にとって都合の悪い情報は示されるのか」「都合の良い説明しかしないのではないか」との住民の意見に、「事業の必要性について丁寧に説明する」と都担当者。これには筆者も「じゃあ、都合の悪い情報は雑に扱う(または無視する)ってことか」と笑ってしまった。

住民からは、「オープンハウスと並行して意見交換会も続けてほしい」「意見交換の場で、都職員も交えて少人数でテーブルを囲み議論する『グループセッション』も取り入れては」との意見も挙がった。しかし都は「ご意見として伺う」と話すのみ。一方的に話し合いの打ち切りを宣言した都が、これらの意見を今後に反映させる可能性は低いと言わざるを得ない。

会場閉館後、話し合いの継続を求める住民が会場
の外で都担当者らを引き止めた。午後10時頃


■「錦の御旗」を得られず

さて、私は過去3回の「意見交換会」に住民の一人として参加したが、小金井市都道計画をめぐって都は住民合意の取り付けに失敗したことが、今回の「話し合いの打ち切り」ではっきりした。

行政が事業を進める上での「住民参加」の手法の一つとして、まず町会長など地域住民の代表者らを集めて意見交換会を行なう。ここでの合意を(形式的にであれ)取り付けた上で、次に住民説明会へと進む段取りだ。

こうすることで行政は「すでに地域住民代表の理解を得ています」という「錦の御旗」を掲げ、住民に事業の正当性をアピールできる。ところが今回、都は「意見交換会」で、この「錦の御旗」を得られなかったのである。

「地元町会長として申し上げる。市長にも伝えてほしいが、町会としてこの都道計画には賛成するわけにはいきません。地域コミュニティが真っ二つに分断される。また、児童通学路も分断する危険な道路だ。さらに災害時、いっとき避難場所の中学校へ避難するのに、わざわざ(都道計画で)新たにつくられる橋を通る必要がない。

原点に立ち返れば、この計画は違法だ。違法を都がやっていいわけがない。計画はいったん白紙にして、都市計画新法に基づいて改めて住民の意見を聞いたり、地元の意見を聞いたりして計画を作り直すべき。そうしなければ都民は都職員を信頼しなくなり、都政への信頼感もますます悪くなる」(参加者の住民)

ちなみに、意見交換会は自治体によっては一般住民には知らせずに行なうことがある。小金井都道問題でも当初「意見交換会」は傍聴や取材が不許可だった。それを1回目の当日、住民側が都側に強力に実現を申し入れて解禁させた結果、毎回多くの市民らが傍聴し、過去2回は議事録も公開されている。これは相当に珍しいケースではないだろうか。

計画の見直しや反対が圧倒的多数を占めた事業化決定前のパブコメ、そして今回の意見交換会。事業の必要性と正当性をめぐり、住民からこれだけのミソがついた都道計画である。オープンハウスの場でも、訪れた住民らから疑問や批判が噴出することだろう。それに対して都が一体どんな対応をするのかに注目だ