2020年12月29日火曜日

はけ文講座2020「都市の自然を考える 第二回・タヌキや身近な動植物と私たちの暮らし 」報告 

はけ文講座2020、第二回目の報告です。一回目と同じくはけ文会員鈴木綾さんがレポートしてくれました。当日のお話がよくわかります。ぜひお読みください。

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2020年12月12日(土)14〜16時

会場 小金井市環境楽習館

講師 高槻成紀先生(麻布大学いのちの博物館名誉学芸員・玉川上水花マップネットワーク表)

司会・安田桂子、オンライン配信担当・佐野哲也

主催・はけの自然と文化をまもる会

協力・小金井玉川上水の自然を守る会(こだまの会)

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都市の自然を考える 第二回・ タヌキや身近な動植物と私たちの暮らし 報告

一昨年は戌年という事で、高槻先生は多摩動物公園で親子向けにイヌ科であるタヌキのお話をなさったそうです。今回の講座は、その時のお話をベースに進めて下さいました。 


高槻成紀先生。

キツネ、タヌキ、オオカミは全てイヌ科で、北半球温帯に住む我々には馴染みのある動物で、その生息範囲を見ると、キツネは極北から熱帯まで広い範囲に分布しています。 
オオカミは先進国では絶滅させられたものの、北半球を中心に広く生息し、その範囲はキツネ以上です。 
これらに比べるとタヌキの生息範囲は非常に限られ、東アジアに自然分布していますが、中国では食用にする事もあり非常に少なく、日本ほどはいません。20世紀前半、ソ連がタヌキをモスクワ郊外に持っていき、軍隊の毛皮を確保する目的で人工的に増やしました。現在では北欧や東欧にまで広がり生息していますが、日本のタヌキの二回りも大きく非常に肉食的だそうです。 
日本人なら誰でも知っているタヌキですが、その実態はほとんど分かっておらず、世界が注目して研究も盛んに行われるパンダの様な動物とは違い、タヌキはありふれていて綺麗でもない為にあまり研究はなされないのだそうです。 


 
<津田塾大学のタヌキ> 
高槻先生は前々から津田塾大学にはタヌキがいるだろうと予想されていたそうで、玉川上水の研究で出会った方が津田塾大学の先生を紹介して下さり、同大学のタヌキの調査が始まりました。 まず始めに、木の下にドッグフードとセンサーカメラを設置しました。その日の夜には、カメラにタヌキが映り、確かに大学にタヌキが生息している事が判明しました。

センサーカメラが捉えた糞をするタヌキ。

 
<津田塾大学のタヌキの行動範囲> 
次にその行動範囲を調査しました。 
タヌキは決まった場所でフンをし、それをタメフンと呼びます。 餌となるソーセージに、色分けしたプラスチックラベルを入れて大学の各場所に置いておき、タメフンのフンを調べる作戦です。 
ラベルを回収してカメラをチェックすると、タヌキはキャンパス内を縦横無尽に動き回っている事、柵を潜って玉川上水から夜8時に大学へ入ってきて早朝に出て行く事が分かりました。 
 
<タヌキと他の生き物との繋がり 〜タヌキの食性〜>  
高槻先生は、生き物の繋がりは「食べる事」だとおっしゃいます。生き物が別の生き物を食べて繋がっていくのです。津田塾大学のタヌキは他の生き物とどう繋がっているのかを知るため、その食べ物を調査しました。 
タヌキのフンを洗って篩にかけると、動植物のかけらが出てきます。 
それらを葉、種子、果実、哺乳類、鳥類、昆虫に分けてカウントします。これを1年続けたので、季節ごとのタヌキの主な食べ物が分かりました。晩冬はこれと言って目立って多い食べ物はありませんでしたが、春になると急に昆虫とネズミ等の哺乳類が多くなり、夏は、哺乳類や鳥類はほとんど出ず、昆虫と果実が多くを占めます。 
そして秋はほとんどが果実になり、初冬は再び昆虫、哺乳類、鳥類が出現しますが、1年を通して最も主だった食べ物は果実でした。
 


この「春に動物質が多くなり、1年を通して重要な食べ物は果実」と言うのは、多くの里山・雑木林に住むタヌキと共通するそうです。ただその種類は異なり、里山・雑木林の温帯の落葉樹林によく生えるノイバラやツルウメモドキは津田塾大学のタヌキからはあまり検出されず、代わりにギンナン、柿の種、ムクノキ、エノキがよく検出され、暗い林の果実を多く食べていました。 
玉川上水はコナラやクヌギ等の落葉低木が多い明るい林ですが、津田塾大学の林は常緑樹が多く、ほとんどがアオキやシラカシで、落葉樹は全く無い暗い林で、木の幹の太さも直径80cmのコナラ等太い木がある玉川上水と比べ、津田塾大学の林はほとんどが直径20cm以下のアオキやシラカシでした。つまり隣接しているのに、林の様子が全く違うのです。これは1929年、津田塾大学が麹町から引っ越して来た当時、周りは畑だらけで砂塵が酷く、防風林として松の木、シラカシ、ヒノキを植えた為です。5〜10歳位だった木々が、現在では100歳余りの立派な林となり、その下生えにムクノキやエノキが生えて暗い林となったのです。 
高槻先生の元には、全国各地からタヌキのフンが送られて来ます。それらを調べていくと、タヌキはその土地ごとに生えている1番相応しい植物を食べていて、つまりタヌキは「多様で可塑的な食性をもっている」と言えます。
 

<タヌキと他の生き物との繋がり〜植物編〜> 
春、調査をしていたタメフン場からは多くの新しい芽が生えて来て、それらの多くはムクノキとエノキで、タメフン場とそれ以外の場所の植物散布を調べると、タメフン場では明らかに動物散布による種子の植物が多かったそうです。 
タヌキから見た植物は生き延びる為の食糧ですが、植物から見るとタヌキは子孫を遠くに運んで散布してくれる重要な生き物です。この事は、ニュートラルに様々な角度から物事を見る大切さを教えてくれると高槻先生は指摘されました。 
 



<タヌキと他の生き物との繋がり〜フン虫編〜> 
動物の糞を食べて分解し土に還す、フン虫と呼ばれる種類の昆虫がいます。玉川上水のタヌキのフン虫はいるのかを高槻先生は調べられました。 
 犬の糞をティーバッグの中に入れ、それを割り箸に挟んで小さなプラスチックバケツの上に渡して、虫が飛んで逃げない様に、バケツには少し水を張っておきます。 
このトラップを夕方に玉川上水に仕掛け、翌朝見に行くとコブマルエンマコガネと言う虫が入ってました。 
高槻先生は、5匹のコブマルエンマコガネが直径4cmのフンを16時間程で分解して平らに崩してしまう映像を見せて下さいました。コブマルエンマコガネは体長1cm足らず、人に例えるとフンは二階建ての家くらいですから凄いパワーです。 
 
もしコブマルエンマコガネが玉川上水だけにいて周りの孤立緑地にいなければ、玉川上水の貴重さが証明できる為、高槻先生は更に調査を続けましたが、実際は予想に反して公園等の孤立緑地44ヶ所中37ヶ所にコブマルエンマコガネはいました。 タヌキは玉川上水とそれに繋がる緑地にはいますが、孤立緑地にはほとんどいない為、意外だったそうです。 
 
同等の実験を八王子の雑木林でも行ったところ、そこではコブマルエンマコガネの他にセンチコガネと言うフン虫もいました。センチコガネは草食獣の糞を好み、コブマルエンマコガネは肉食獣の糞を好みます。 
かつては小平にも多くの馬や牛がいましたが、戦後の開発により雑木林が減って馬や牛等の家畜がいなくなりました。そうしてセンチコガネは玉川上水付近では生き延びる事が出来なくなり、タヌキやイヌ等の肉食獣の糞が供給されるコブマルエンマコガネだけは何とか生き残ったのではと言うのが高槻先生の仮説です。 



<津田塾大学のタヌキ調査まとめ> 
以上の調査により、津田塾大学のタヌキについて以下の事が分かりました。 
 
・玉川上水を往復している。 
・シラカシ等の暗い林に生えるものを食べている。 
・種子散布の役割を担っている。 
・フン虫に食べ物を提供している。 
 

<タヌキと子供観察会> 
自然保護を声高に叫ぶのも良いが、若い世代に「自然って面白いね!」と伝える事も大事なのではと高槻先生はおっしゃいます。先生は子供達を集めて、タヌキのフンを調べたりフン虫トラップを仕掛ける観察会を開きました。 
 
動物の糞もそれにたかるフン虫も、汚いものとして嫌がられるものですが、子供達は興味深く話を聞いて熱心にスケッチをしたそうです。ある子の感想文には「もしフン虫がいなかったら森はとてもとても臭くなってしまう。フン虫は大事な役割をしている。」と書いてあったそうです。 
偏見の無い子供達の反応を見て、先生は「偏見は知らないことから生まれるのだ」と思ったそうです。知ることは偏見から自分を解放すること。世界中で起こっている人間同士の偏見も同じ事ではないかとおっしゃっていました。



<タヌキという動物と私たち> 
タヌキとキツネは人を化かすと言われます。化かすとは、変化する事で相手に迷惑をかける事です。 
 
江戸時代、暗闇は大人にとっても大変怖いものでした。夕闇の町や農山村で、タヌキが足早に走り、途中でちらりとこちらを振り返り、また走り去って行く。 
野生動物の世界では、敵から逃げる最中に振り返り、敵が来る方向とは逆へ逃げる習性があります。自分の命を守る大切な動きですが、人間には泥棒や万引きがキョロキョロと周りを窺う怪しい動きに見えたのです。そこから人に対して悪事を働く、よからぬ事を企む生き物として「化ける動物」とされたのです。 
 
タヌキを悪者として描く昔話「カチカチ山」は室町時代に出来ました。日本人のほとんどが農民の時代だったので、農作物を荒らす害獣のイメージが強かったのです。 
昔話「ぶんぶく茶釜」は江戸時代に出来た話で、多くの日本人が町民で消費的生活をしている時代です。町民からしたら、いてもいなくても害にならない事から「人が良いが間が抜けている」イメージになりました。 
「では現代の都市人の我々にとって、タヌキはどんなイメージでしょう?」と言って先生がスクリーンに映したのは、PontaカードのキャラクターPontaでした。思わず会場では笑いが起こり、無邪気そのもののイメージしか無いと言う先生の指摘に皆んな納得しました。 
ここで注目すべきは、今も昔もタヌキは何も変わっていないと言う事です。変わっているのは人間の都合です。 
獣偏に里と書くタヌキは、ずっと人のいる所に寄り添って生きて来ました。しかし、珍しくもなく綺麗でもないので保護はされていません。将来、タヌキと言う動物がどうなるかは分からないと言うのが現状です。 
玉川上水は空から見下ろすと、幅は狭いですが長く繋がっています。この長く繋がっていると言うのがタヌキには良いのです。上水の緑地が道路の建設により分断されれば、タヌキは生きていけなくなります。タヌキが住んでいる所に、都市生活者が車を走らせれば確実に事故は起こるでしょうと高槻先生はおっしゃいます。 
 

<最後に> 
「地球は人間のためだけにあるのではないのです」と言うレイチェルカーソンの言葉があります。素晴らしい言葉ですが、この概念は数百年も前のアイヌの民話の中に既に見られます。 
「ミソサザイとサマイクルのカムイ」と言う話です。 
昔、森に狼藉者のクマがやって来て、木を倒したり沢山の生き物の命を奪いました。これに怒った小さな鳥ミソサザイは、クマを倒そうと他の鳥達に相談しましたが、クマを倒せる訳がないと断られました。そこでミソサザイは人間の神サマイクルのカムイにクマの成敗を頼みます。闇の中、ホタルがクマの目の位置を示し、サマイクルのカムイは見事クマを弓矢で射ち抜きました。 
サマイクルのカムイは手にミソサザイを乗せて、他の生き物達にこう語りました。 
「身体が小さいからと言ってばかにしてはいけません。最も悪い事は他を軽蔑することです。」そしてホタルを指して「神様は決して無駄なものは作らないのです。」と言いました。
高槻先生は、クマはかつてアイヌの人々を滅ぼしたヤマトだと確信したそうです。サマイクルのカムイの言葉はまさに生物多様性を語っており、この世は人のためにだけにあるのではないと示唆しています。

レイチェル・カーソンのことば。
アイヌのことば。



<講座を聞き終わって> 
今回のお話を通して「知る」と言う事について考えさせられました。名前と姿を見聞きするのは「知る」事のほんの入り口で、その存在が他の生き物とどう繋がって生きているのか、その存在と自分はどのような関係にあるのか、そういう事実を徹底して見ていく事で「知って」いく。 
生物多様性を保全し、その中で人間の活動を行なっていくのは、あらゆる事実の上に成り立つ「知識」を駆使していく事なのだと思いました。 
 
そして同時に「知る」前の「興味をもつ」大切さも感じました。 
高槻先生の調査の出発点はいつも「知りたい」と言う好奇心です。他の生き物に関心を持つ事は、自分が生きているこの世界への好奇心です。自分が生きているこの地球とは一体どんな所なのか?他の生き物への関心は、自分自身への関心に繋がるところもありそうです。 
純粋な好奇心が次々と事実をすくいとって「知識」になっていく。その「知識」の上で「行動を選択していく」。様々な問題解決に必要なのは、このシンプルなサイクルだけなのかもしれません。 
 
玉川上水とタヌキのお話を聞いていて、私はふと自宅で使っている洗剤の事を思い出しました。ヤシノミ洗剤で知られるサラヤの「ハッピー・エレファント」と言う洗剤です。この洗剤は、環境中の生態系全てで生分解されるソホロと言う天然洗浄成分を使っていて、売り上げの一部がボルネオ島の熱帯雨林回復に使われます。東南アジアの赤道直下にあるボルネオ島は、膨大な二酸化炭素を吸収する事からアマゾンと並んで「地球の肺」と呼ばれます。 
しかしその熱帯雨林の森は、アブラヤシ農園で途切れ途切れになってしまいました。アブラヤシの果肉からは「パーム油」がとれ、インスタント麺やポテトチップス等の食用油に。その種からは「パーム核油」がとれ、化粧品や洗剤等様々な製品に使われます。アブラヤシを植える為に熱帯雨林は伐採され、過去50年の間に島の森林面積は50%以上消失しました。 
 
森が分断された事で動物が身を隠して行き来する事が出来なくなり、人間と動物の様々な衝突が起き、中でもオランウータンとゾウは絶滅の危機に瀕してます。この「事実」に気付いたサラヤは、分断された森の回復を目指す「緑の回廊」計画をスタートさせました。農園内に流れる川沿い14kmに植林を施すのです。森と森の間に吊り橋を架ける事でオランウータンは移動出来る様になりましたが、ゾウは森林が無ければ身を隠せないからです。 
こうして持続可能な共生を目指しているのですが、ボルネオ島の「緑の回廊」とゾウが玉川上水とタヌキの関係に重なって見えたのです。高槻先生がおっしゃった通り、タヌキは珍しくも綺麗でもありません。
でも、居て当たり前なら保護しなくても良いのでしょうか? 
私達は東日本大震災3・11でありふれた日常の有り難さや大切さを思い知らされ、今はコロナ禍により当たり前がいとも簡単に崩れてしまうのを見ました。あって「当たり前」の目の前の現実を、よくよく見て考えなければならない時代に生きているのではないでしょうか。小金井に住む私にとって、あって「当たり前」の玉川上水や野川、公園、それらを形作っている動植物達をよく見て「知って」いきたいと思いました。        (はけ文会員・鈴木綾)

2020年12月18日金曜日

はけ文講座2020「都市の自然を考える 第一回・ 花マップの調査から分かる玉川上水」報告

 毎年開催して今年で4年目のはけ文講座、今年はコロナ禍で開催できるか不安でしたが、小平市在住で動植物の生態系について長年研究されている高槻成紀先生との出会いから、とても素晴らしい講座を開催することができました。リアルの参加者は少なめに、オンラインと両方で受講していただきました。講師の高槻先生、ありがとうございました。

講座のレポートを2回に分けて掲載します。レポートしてくれるのは、はけ文会員の鈴木綾さんです。

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2020年11月22日(日)14〜16時

会場 小金井市公民館貫井北分館学習室AB

講師 高槻成紀先生(麻布大学いのちの博物館名誉学芸員・玉川上水花マップネットワーク表)

司会・安田桂子、オンライン配信担当・佐野哲也

主催・はけの自然と文化をまもる会

協力・小金井玉川上水の自然を守る会(こだまの会)

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「都市の自然を考える 第一回・ 花マップの調査から分かる玉川上水」報告

第1回目の講座は、玉川上水の歴史を紐解くところから始まりました。

1653年、江戸の人口急増に応じて生活用水を確保する為、幕府により玉川上水は作られました。西は羽村から東は四谷大木戸まで長さ43km。 

当時、小金井の玉川上水沿いで花見を楽しむ人々の様子を、歌川広重が「武州小金井堤満花之図」の中に描いています。これを見ると、桜の木の周りは下刈りされ、上木の無い所に生えるススキ群落が背後に広がっているのが分かると高槻先生は指摘されます。
 


 
時代は降って1965年、東京オリンピックが開催され、東京が大きく変わった年。開発優先の高度成長期の中、玉川上水の小平以東は停止され、水の絶えた「空堀」に。また杉並区の浅間橋より下流は暗渠化され、玉川上水の長さは30kmになりました。 
空堀には生活ゴミや粗大ゴミが投げ入れられ、ひどい様子だったそうです。 
 
しかし公害など環境問題が深刻化した1970年代、自然保護意識が高まった市民の動きを受け、東京都は玉川上水の「清流復活」を決断。水流は甦り、現在に至ります。 
玉川上水全体が暗渠化されてもおかしくない時代の中、都が市民の声に耳を傾け、玉川上水とその雑木林を残した事は注目に値すると高槻先生はおっしゃっていました。


 
 このように360年以上に亘る玉川上水の歴史をなぞる事で、その在り方は「常に人により変化させられる」都市緑地の宿命を負っているのだと言う事が分かります。 
 
次に、どのような植物が玉川上水の生態系を形作っているのかをお話して頂きました。 
 
東京オリンピック以降、急激に無くなった雑木林の野草が、玉川上水をレヒュージア(避難所)として逃げ込み何とか生き延びていると高槻先生はおっしゃいます。 
 
上木の無い所にはススキ群落がある一方で、直射日光の当たらない林の下に生きる野草(ニリンソウ、チゴユリ、カタクリ、キクザキイチゲ)がある。この異質性が玉川上水の多様性を生み出しているとのこと。 
つまり、上木の在り方が地表植物に大きな影響を与えており、全てを桜偏重の管理にしたら武蔵野の野草は死に絶えます。 
桜だけを守る姿勢は、生物多様性保全とは相容れない事をしっかり自覚した上で、玉川上水全体のビジョンを描く事が大切だと高槻先生はおっしゃっていました。
 
美しい玉川上水の緑地帯。


今年2020年の春に、小金井の玉川上水を訪れた高槻先生は大変心を痛められたそうです。 
桜並木を優先する為に樹齢70年ものケヤキが何本も切られてしまっていたのです。 
御自身と同じ月日を生きた木々が、電柱や廃屋を壊すのと同列の感覚で切られてしまっているのは、とてもショックだったとの事。 
 
またつい先日、小平市でも玉川上水の多くの木々が伐採される計画がありました。法面の崩壊防止と住民の安全を守るためというのが伐採の目的とのことでしたが、明らかに剪定だけで済む木や伐採の必要の無い木にまでテープの印が付けられていたそうです。 
高槻先生は立ち会いをしながら、「これはクヌギだから残しましょう」等理由を付けて、1本でも多くの木を救おうと努力しながら、まるで自分が1人でも多くのユダヤ人を救おうと尽力した杉原千畝になったように感じられたそうです。 
 
東京に残された緑地をどう残していくか、玉川上水の緑地をこのままの形で子供達に引き継ぐ責任が私達にはあると、高槻先生はおっしゃいます。玉川上水には希少な動植物はいませんが、当たり前と思い気を配らないうちに居なくなってしまったメダカやスズメを例に挙げ、希少だから守ると言う姿勢では環境は守れないともおっしゃっていました。 
 
最後は、アメリカの生物多様性の研究者Edword O.Wilsonの「人間の便利さ豊かさのためなら何をしてもよいという考えはいい加減やめよう」と言う言葉で講座は終わりました。

高槻先生が描かれた草花の絵葉書。

 
今回私の中で印象的だったのは、上空から見下ろした東京都の中の玉川上水です。灰色の建築群の中に細く繋がる緑の線。 
それは各時代の人々の思いを受けて変化し続け、その将来は今現在を生きる私達の手の中に確かにあるのだと、ずっしりとした責任を感じました。  
そして玉川上水は繋がっているのだと言う当たり前過ぎる事実。私達は日本を都道府県に分け、更に市町村に分けて区別しています。しかし実際は、自然(世界)は途切れる事無くゆるやかに繋がっています。玉川上水の一部の問題は玉川上水全体の問題であり、東京都の問題であり、日本の問題であり、もっとズームアウトすれば世界の問題でもあると言えるのです。 
全ては繋がっているのだと言う俯瞰した視点の元、玉川上水全体のビジョンを描き共有する重要性を心に留めておきたいと思いました。          (はけ文会員・鈴木綾)

終了後、先生を囲んで。

オンライン配信など、初めての試みでしたが、皆さんのご協力で無事に終えることができました。はけ文、こだまの会の皆さん、オンライン担当だった佐野さん、ありがとうございました!

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今回の講演会のタイトルにある『花マップ』、高槻先生が玉川上水の自然観察会をするうちに、関野吉晴先生とのご縁から武蔵野美術大学の学生さんや地域で活動する方々との繋がりができ、人手があるからこそできる調査をしようと高槻先生の提案で始まったという調査です。玉川上水にかかる橋で区切って担当を決め、その人が四季折々丹念にそこに自生する植物を調べて記録を取り写真でも残し高槻先生に報告。確かな記録をまとめることを徹底しました。それをまとめたのが『玉川上水花マップ』です。
貴重な植物は細かい場所は明かさずに載せるなどの工夫をしてありますが、できる限り正確に野草の分布が掲載されています。2019年にはこんなものが自生していたというとても貴重な記録です。しかし調査記録というだけでなく、気楽に持ち歩いて楽しめるようにというデザインになっており、高槻先生のイラストも入り、玉川上水散策のお供としても楽しめます。購入も可能ですのでお読みになりたい方はぜひお申し込みください。





2020年11月11日水曜日

はけ文講座2020「都市の自然を考える」のお知らせ

 今年のはけ文講座は、小平で活動されている高槻成紀先生のお話を聴きます。

これまでのしっかりとした研究をもとに、小平の玉川上水を中心に自然観察会を催されたり、研究活動を続けておられる高槻先生。都市の自然の中の動植物のつながりに目を向け、都市の中のタヌキなどの哺乳類や昆虫、植物についてわかりやすくお話ししてくださいます。

新型コロナウィルス感染予防のため、会場の定員が少なくなっております。各回定員20名です。参加ご希望の方は、下記までMailにてお申し込みください。

【第一回】

「花マップの調査からわかる玉川上水」

講師 高槻成紀先生(麻布大学いのちの博物館名誉学芸員

           ・玉川上水花マップネットワーク代表) 

日時 11月22日(日)14~16時

会場 小金井市公民館貫井北分館学習室AB


【第二回】

「タヌキや身近な動植物と私たちの暮らし」

講師 高槻成紀先生(麻布大学いのちの博物館名誉学芸員

           ・玉川上水花マップネットワーク代表)

日時 12月12日(土)14時〜16時

会場 小金井市環境楽習館


申込/問合せ hakebun☆gmail.com(☆を@に変えてください)

問合せ 090-1776-0874(横須賀)



2020年11月1日日曜日

市議会の意見書を無視!都が環境調査を開始

 


【市議会の意見書を無視!都が環境調査を開始】

東京都が都市計画道路小金井3・4・11号線の環境概況調査を開始するとの情報が入りました。小金井市議会は9月に、調査の中止と長期的視点で2路線の見直しを求める意見書を出しています。
※全文はこちらhttp://hake-bun.blogspot.com/

8月には、はけ文と都市計画道路を考える小金井市民の会も、入札に抗議し要望書を提出しています。

この調査は、道路整備の前段階の調査です。調査によって整備の方針が変わるものではありません。地元議会の意見を完全に無視し、どこが都民ファーストなのでしょうか?このままでは、国分寺崖線や野川の環境を守ることは出来ません。

下記は東京都からのお知らせ文です
調査に関する疑問・質問は直接問い合わせましょう
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令和 2 年10月
武蔵野公園・野川公園における環境概況調査の実施について

このたび、武蔵野公園及び野川公園において、下記のとおり環境概況調査を行 いますのでお知らせします。
この調査は、「東京における都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画)」に おいて優先整備路線に位置づけられた都市計画道路小金井3・4・11号線及び 府中3・4・16号線について、計画道路周辺における動植物の生息・生育状況を把握することを目的に実施する基礎的調査です。
ご協力のほど、よろしくお願いいたします。

裏面「調査箇所図」参照

1.調査内容

【植物調査】 植物相調査(早春・春・夏・秋季)、植物群落調査(夏季) 
【動物調査】 哺乳類調査(春・秋季)、鳥類調査(春・夏・冬季)、
両生類・爬虫類(春・夏季)、昆虫類(春・夏季)、 魚類(夏季)、底生動物(春季)

2.調査時期

・秋季調査 (令和2年11月)
・冬季調査 (令和2年12月~令和3年1月頃) ・早春季調査(令和3年3月頃)
・春季調査 (令和3年3月~5月頃) ・夏季調査 (令和3年7月~8月頃)
注)天候等の状況により調査時期が変更となる場合があります。 

3.調査範囲
注)調査は武蔵野公園・野川公園(閉鎖管理地含む)及び野川(調節池含む)の範囲にて実施します。 

4.調査機関
発注者 東京都北多摩南部建設事務所 担当:工事第一課環境対策担当 橋本、吉田
電話:042-330-1836 
受託者 ユーロフィン日本環境株式会社 担当:環境コンサルティング事業部 ⻲井
電話:045-780-3338

以上
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〈備考〉
・調査員は発注者発行の身分証明書を携帯し、腕章を着用して調査を行います。
・小型哺乳類(ネズミ類)や昆虫類を採捕するためのトラップを設置する際は、周知のための看板を設置します。




ムジナ坂清掃を行いました。

6月以来のムジナ坂清掃。もっと頻繁にやりたいと思いながらあっという間に月日が流れてしまい、もう11月?!とびっくりしてしまいます。

今回は初めてのぼりを立ててみました。「やってるアピールすごい!」って思われてしまいそうですが、「はけを守りたい」というアピールであると同時に、「怪しいものではありません」という意味もあるわけで・・・今日はこれまでで最高の10名参加!!のぼり効果なのか、やっているのをみて、近所の男性が途中から参加してくれました。とても嬉しかったです。

雨が降ると階段に土が堆積してしまうので、シャベルを手に覚悟して始めましたが、今年は台風直撃も今の所ないので、雨も少ないのか土は少しあるものの乾いていて作業は楽でした。でも落ち葉の下にはミミズがいっぱい。全部緑地へ避難させました。






おまけ。誰かが落としていった軍手から草が生えていました。面白いオブジェになってました。




 

2020年9月26日土曜日

小金井市議会で東京都への「見直しを求める意見書」採択されました。



 小金井市議会で、「小金井都市計画道路 3 · 4 · 1 1 号線外の環境概況調査の中止と長期的視点で 2 路線の見直しを求める意見書」が採択されました!

東京都は、3・4・11号線に関する環境概況調査に、2,959,000円もの予算を使って外部業者に発注することが、9/17に落札情報によって判明しました。

市議会から東京都には以前にも、環境調査を中止する意見書が出され、はけ文含む市民団体連名でも入札に抗議する文書を手渡しています。

小金井市および東京都は、市民の代表である市議会の意見書を重く受け止め、見直しに向けて行動すべきです。








2020年8月26日水曜日

東京都が3・4・11号線の環境調査に着手!!中止を求める要望書を提出しました!

 東京都が3・4・11号線の環境調査を進めようとしていることが判明しました。コロナ禍を受けて不要不急の事業は原則、延期か中止することという依命通達の中で「街路整備」が明記されていることを都建設局に問い合わせると、「都市計画道路は都民の生命・財産に関わる重要な事業である」との回答でした。未着手の道路新設についてそのような認識とは、驚きを禁じえません。

今年2月に開催されたオープンハウスでは、わずか2日半の説明会で一千万円以上の税金が使われたことが判明しました。今回の環境調査には一体いくら税金を使うのでしょうか。これは妥当な支出でしょうか?

小金井市議会からも環境調査に着手しないよう意見書が出されていますが、今回も無視された形です。道路を整備することが前提で、調査結果によってそれがくつがえされることはありません。都は「丁寧に進める」というだけで根本的に見直すことなく、着々と計画を前に進めているのが現状です。

8月25日(火)都市計画道路小金井3411号線に関する環境調査の入札に対して、東京都建設局に中止を求める要望書を提出しました。

はけの自然と文化をまもる会、都市計画道路を考える小金井市民の会、3411号線関係住民の会の3団体が連名しました。
下記が要望書の全文です。

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都市計画道路 小金井3・4・11号線に関する環境調査入札の中止を求める要望書


 東京都が8月17日に告示した、都市計画道路小金井3・4・11号線周辺の環境調査の入札に抗議し、環境調査の中止を求めます。

2015年に優先整備路線(案)に選定されてから、東京都はパブコメでの圧倒的反対意見や市議会からの見直しの意見に真摯に向き合うことなく、「丁寧に進める」として整備に向けて突き進んでいます。

新型コロナの影響を受け、不要不急の事業は原則延期または中止るという副知事連名の依命通達にも従わず、未着手の道路新設を「都民の生命、財産に関わる重要な事業」とする都建設局の姿勢は、市民の感覚と大きくかけ離れています。景気の悪化で雇用不安が増すなか、市民の命と暮らしをまもる事業にこそ税金を使うべきなのは、誰の目にも明らかなことです。地域の賛同が得られない事業を強引に推し進めようとする東京都は、完全に思考停止に陥っていると言わざるを得ません。

今年2月に開催されたわずか2日半のオープンハウス型説明会には、1041万5081円もの貴重な税金が使われました。整備を前提にしたこの環境調査に関して、小金井市議会からも6月23日に「優先整備路線に位置付けられた小金井市の都市計画道路2路線に関して、今年度の関連事務の停止と、長期的視点で事業化の見直しを求める意見書」が採択され、都に意見書が提出されました。

今回の入札告示は、地元議会の意見を無視した暴挙と言っても過言ではありません。民意を反映しない事業の中止を強く求めます。

2020年8月25日

はけの自然と文化をまもる会
都市計画道路を考える小金井市民の会
3・4・11号線関係住民の会


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ご対応いただいたのは、東京都建設局北多摩南部建設事務所の細見明彦所長、工事第一課の森田健夫課長です。森田課長によると、依命通達を受けた事業の整理は、今後行われる見込みとのことです。来年11月に環境調査を終え、その後説明会を開催する予定と思われます。今後も東京都の動向に注目していきます。


〈小金井3・4・11号線に関する環境調査入札情報〉

    書(抜粋)

委託件名:環境概況調査委託(2北南―小金井3・4・11外1路線)
委託場所:東京都府中市多磨町二丁目地内から小金井市東町五丁目地内まで
契約期間:契約確定の日の翌日から令和3年11月1日まで

第2章   委託目的
本委託は、「東京における都市計画道路の整備方針(第四次事業化計画)」において優先整備路線に位置づけられた
都市計画道路小金井3・4・11号線及び府中3・4・16号線について、計画道路周辺における動植物の
生息・生育状況を把握することを目的として実施する基礎的調査である。
第3章   委託内容
  1. 植物調査
  2. 動物調査
     
     哺乳類調査  鳥類調査  両生類・爬虫類調査  魚類調査 昆虫類調査 底生動物調査
4.考察及びモニタリング計画案作成
 (詳細は添付のファイルを参照してください)

森田健夫工事第一課長(右)

北南建の細見明彦所長(右)